ご挨拶

宮本先生 日本婦人科がん分子標的研究会 会員各位

この度、第20回日本婦人科がん分子標的研究会学術集会を2021年11月13日(土)及び14日(日)の2日間、福岡大学病院 福大メディカルホールにて開催させていただく予定となりました。伝統ある本学術集会の会長のご機会を頂きましたことを心より御礼申し上げます。2019年末に発生した新型コロナウィルス感染症COVID-19の影響で第19回日本婦人科がん分子標的研究会学術集会は11月に延期され、オンラインでの開催となりましたが、未だCOVID-19の終息が見通せない現在の状況では、第20回学術集会もオンラインを併用しての開催が現実的な対応になるかもしれません。可能でしたら懇親会等も開催させていただき、皆様との活発な意見・情報交換で盛り上げていきたいところですが、現状では難しいと考えております。このように大変厳しい状況ではございますが、本会員の皆様には学術集会に積極的にご参加頂き、新しい知識の吸収と最新の研究成果発表の機会として頂ければ幸いでございます。

今回の学術集会では「これからのトランスレーショナルリサーチの再考」をメインテーマとして特別講演等を企画して準備を進めています。トランスレーショナルリサーチは本学術集会でも度々テーマとしてディスカッションされてきておりますが、これまでの分子生物学的手法やゲノム解析を用いた診断方法や治療薬は、適応患者の選別に時間やコストを費やすことが多く、治療薬によっては結果的に著しく薬価が高額となり、薬剤に対する耐性化や予期しない副作用など、改善するために開発した医療技術が多くの問題を生じさせる結果になっています。そのような背景の中、最近ではがん領域における創薬モダリティの変遷として、生物由来の物質(細胞、ウイルス、バクテリアなど)により産生されるバイオ医薬品、iPS細胞や体性幹細胞に代表される再生医療、AIを用いた画像や病理における診断技術を含むデジタル医療などの存在感・重要性が急速に高まっています。そこで、本研究会の患者のためになる診断及び治療に結びつくトランスレーショナルリサーチを目指すという目的に今一度立ち返って、婦人科がん領域の医学研究者にとって次世代の創薬には何が求められるのか?ということを再度見つめ直したいと考えております。つきましては、特別講演1としてマイクロバイオーム研究の第一人者である、理化学研究所の生命医科学研究センター・マイクロバイオーム研究チーム・チームリーダーの大野 博司先生に「マイクロバイオームとがん」をテーマとした講演をお願いし、がん領域におけるヒトを主体とする宿主と共生細菌叢との相互作用のゲノム情報科学から生命情報科学的解析までの統合的な研究についてお話しいただく予定です。また、特別講演2として婦人科疾患における脂肪幹細胞を用いた再生医療の研究と臨床応用を行っている福岡大学医学部産婦人科学教室・准教授の四元 房典先生に「再生医療とがん治療」をテーマにご講演いただく予定です。

最後になりましたが、会員の皆様のご健勝と研究の益々のご発展をお祈り申し上げます。がん分子標的治療に関する熱い議論を交わしていただきますよう改めてお願い致しまして、ご挨拶とさせていただきます。では、第20回学術集会でお目にかかれますことを楽しみにしております。

第20回日本婦人科がん分子標的研究会学術集会 会長
福岡大学医学部産婦人科学教室 教授
宮本 新吾